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吉川 佑人
『正欲』鑑賞
11/13
『正欲』
あるフェティシズムを持つ事を隠し生きて来たOLの夏月は中学時代の同期で自身と同じ嗜好を持つ佳道と再会を果たす。
横浜で検事を勤め不登校になった小学生の息子の教育方針で妻と衝突中の寺井は自身にとって理解不能の多様性を持つ人々に困惑するヒューマンドラマ
人には繋がりが必要不可欠。
この広く狭い世界で”嗜好”を共有する事の出来る人間同士の出会いは極めて貴重なもの。
故にその人との”繋がり”を頑なに大切にする事は何よりも尊重するものである事を他者から頭ごなしに「ありえない」「分からない」の一言で片付けられたく無い気持ちは良く分かるしだからとて無理に理解は求め無い。
社会で生きている中で求められる「共感と理解」しかし、本当は上部だけで人間が本当に他者を理解しているというものは自分勝手な願望でしか無い…
LGBTQの語が使われる世界でも浸透率の低いこの国では”多様性”というものを求められても順応など出来ていない。
未だに多くが軽蔑される”フェティシズム”ですら十分に知らない世界が広がっている事もまた事実であり、それを痛感する本作においての”水フェチ”に関する簡易的な台詞による説明と美しき映像美でバシバシ決めた上で死んだ顔の登場人物らが生き生きとする様は感慨深い。
人によって違う「普通」という言葉に疑問を抱く毎日に苛立ちを覚える感覚ですらマジで苦痛にすら感じる時があるのは事実。
“気遣い”という他人を傷つけまいと相手を神経質にさせ同時に窮屈にさせるこの社会にとっての正しさとは一体なんだ?
劇薬を扱う今作において気持ちを言葉にせず憤慨や幸福を隠さずほぼ死んだ目付きで日々をやり過ごす新垣結衣の演技に圧倒される!
誰かに関する無理解、いわゆるマイノリティ(社会的少数者)を理解しない人間の比喩的代表として順法精神と一般的常識を振り翳し理解出来ぬ事を恐る現代の”壁”の象徴となって自らの正義感で誰かを傷付けていた事に気が付かない後味の悪さを覚える役柄を自然に演じ切った稲垣吾郎の演技は評価したい。
登場人物が多数登場し描きある点で繋がりを見せた演出はいいが、後半になるまでどの人物がメインで描きたいのかが分かりづらく映画としては非常に退屈で長過ぎる教育ビデオ的な今作
新垣結衣と稲垣吾郎を持って来たのは良いが男性恐怖症の少女の描写も見せておいて最後を描かず放置したのは許せない!
☆☆